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2013年9月23日 (月)

忘れられる911

今年2013年9月11日は、2001年のニューヨーク・ツインタワービル「911」から12年目でしたが、ほとんど話題になりませんでした。

事件が風化するのは早いんだな・・・

という話ではありません。もう一つの911です。

1973年9月11日に何が起こったか。

その日、ペルーのサンチャゴに「雨が降った」・・・

気象情報の話ではありません。「雨が降る」は暗号です。

1970年選挙によって選ばれたアジェンデ大統領は、穏健派の共産党や急進的な社会党などの「人民連合」が支持母体の、南アメリカ初の社会主義政権でした。

しかし、社会主義政策は富裕層や軍部の反発を招き、米国CIAの干渉するところとなります。

1973年9月11日、大統領のいるモネダ宮殿はチリ軍によって砲撃され、大統領は亡くなります。

チリ・クーデター
〈世界で初めて自由選挙によって合法的に選出された社会主義政権を、軍部が武力で覆した事件として有名である。〉 wikipediaより

攻撃開始を「雨が降っている」と暗号でラジオは伝えたのでした。

と、如何にも見てきたような話を書きましたが、「雨が降る」の部分は映画のストーリーを借りました。

『サンチャゴに雨が降る』(Il pleut sur Santiago)は、1975年制作のフランス・ブルガリア合作映画。

1973年9月11日早朝のチリ・クーデターの発生から首都サンティアゴを中心にした各地の市街戦、軍事評議会による権力掌握を経て、詩人パブロ・ネルーダの葬儀にいたる10数日間の出来事の描写を軸に、並行して、登場人物の一人である外国人記者の回想という形で、サルバドール・アジェンデの大統領当選からクーデターに至る流れが描かれる。〉 wikipediaより

この事件はリアルタイムで知っているはずなのですが、当時は関心が半径300メートル程度のアーパールーパーでした。映画も公開されたのを知っているのですが、見に行きませんでした。見ていれば、その後の人生が少しはまともになっていたかも・・・

グチっても仕方ない。今から見ましょう。

↓雰囲気の分かる予告編

『サンチャゴに雨が降る』 DVD用トレイラー IL PLEUT SUR SANTIAGO
http://youtu.be/RJdpM772SYI

130918_ilpleut

↓全編。フランス語。英語の字幕がついてて、その上にスペイン語の字幕が重ねてあります。2時間ちょっと・・・

Llueve Sobre Santiago-Subtitulada al Español-(Completo)
http://youtu.be/H3uBUdj4Xik

DVD買うべきかな・・・スティングレイから3800円で出てましたな・・・

130919_santiago_j

↑この画像で思い出しました。上部の血に染まった無念の表情をチラシかポスターか予告編で見て怖気づいてしまった・・・気がします。

今頃どうしてチリ・クーデターが気になったかというと、『革命商人』(深田裕介 新潮社 昭和54年(1979年)8月15日)を読んだからでした。

小説ですが、事実を下敷きにしています。革命(クーデター)を商機として活躍した日本商社の話でもあります。岩崎商事とか宮井物産とか、モデルがすぐ分かる名前がでてきます。

中心になっているのは、チリ陸軍にトヨタのランドクルーザーを売り込んだ宮井物産と、理想に燃え人民連合に肩入れし急進派に資金提供をすることになる江利産商。

江利産商に関しては、小説中にのみ存在する商社なのか、モデルが分かりません。小説では、クーデター後、命からがらチリを脱出します。

『革命商人』から少し引用。

〈「先刻からラジオが妙なことをいうとるし、煙があがっとるので、気になって(中略)、工科大学の寮がMIRの巣やいうんで今朝がた軍に襲撃されたらいいですわ」

(中略)

 坂部のいうとおり、背後の工科大学の構内からは盛んに煙があがっていた。

 エクアドール通りの入り口近くに息子や娘の身を案じて集まってきた両親なのか、中年の男女が数人立って不安そうに煙のほうを眺めている。〉 (下巻・206ページ)

江利産商支社長海野が、我が子同様に面倒を見ていた若いペルー人姉弟は前夜この寮に泊まり、行方が知れない・・・

「先刻からラジオが妙なことをいうとるし」は、「雨が降っている」とのラジオ放送のことを言っているはず。

〈この日、陸軍は左傾した学生がもっとも多い工科大学を中心にチリ大学薬学部、カトリック大学などを襲撃している。〉 (下巻・206ページ)

〈「子ども相手にひどいことをしたもんですよ」〉 (下巻・206ページ)

軍と学生が相容れないことを、著者は小説の始めのほうで、宮井物産チリの社長となる平川の、戦時中学徒動員により召集された体験とからめて記述しています。

〈学生が陸軍でいかに処遇されたかは、山本七平氏が「一下級将校の見た帝国陸軍」の中で指摘する「陸軍が最後の最後まで学生を信頼せず」、かつまた「インテリは兵士に向かず、学生は軍人に適さない」と頑固に信じこんでいた、という言葉に尽きるだろう。〉 (上巻・20ページ)

知識人も多くが犠牲になりました。

フォルクローレシンガーのビクトル・ハラ、国民的詩人のパブロ・ネルーダ・・・

ネルーダは直接殺害されたのではありませんが、クーデターが病気を致命的に悪化させたといわれています。

〈何もかも悲しいね。パブロはサルバドル・アジェンデの親友だった。社会主義へのチリの道は彼の生涯の理想だった。アジェンデが死に、社会主義政権が倒れてから、十四日後にパブロは死んだ。パブロは失望のあまり死んだのではない。だが、強い失望感を抱きながら死んでいったのだ、と思う。(ガブリエル・ガルシア=マルケス)〉  「ネルーダ詩集」田村さと子訳編 思潮社 116ページ。

↓スペイン語はわかりませんが、「ビクトル・ハラがパブロ・ネルーダの詩を歌う」という意味だと思います。心にしみる歌声です。

Victor Jara canta a Pablo Neruda. Poema 15 (HQ)
http://youtu.be/wEy-PDPHhEI

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選挙で選ばれた大統領が軍部に殺害されたことも衝撃ですが、事件から40年たった今、改めて感じたのは、CIA(米国)の干渉・・・

2001年のニューヨーク・ツインタワービル「911」発生当時は、さまざまな「陰謀説」が囁かれました。半信半疑で聞いていましたが、今となっては自作自演説が眉唾ものでない気が濃厚にしてきます。

ことし「ニューヨーク911」が話題にならなかったのは、その後いろいろと綻びが出ちゃって、意図した国威掲揚どころでなくなり、「早く忘れてくれ」と権力筋が願ったから?

そんなことを思いつつ、9月11日をやり過ごしていたら、9月17日朝日新聞朝刊に「(世界発2013)軍政の傷、向き合うチリ クーデターから40年」という記事が掲載されました。

5966_asahi

デジタル版
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309160422.html

(登録(無料会員)すれば読めます。)

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「Victor Jara canta a Pablo Neruda. Poema 15」が、何を歌ってるのかさっぱりわからないのは悔しい。

そこで詩を検索しました。スペイン語です。翻訳があるかと思ったのですが、探し方がわるかったのか、見つからず。スペイン語を探して、自動翻訳しようとして英訳が見つかって・・・

この話、長くなりますので次回に・・・

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