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2013年8月22日 (木)

空の神兵

神鷲、と聞いてすぐ分かる方は「通」、という話じゃなくて、「ガルーダ」の振り仮名をみてインドネシアの話だとわかります。

『神鷲商人』(深田祐介 新潮社 昭和61年(1986年)11月20日)

戦後の対インドネシア賠償がらみの商売の小説です。小佐野賢治 児玉誉士夫さん等きな臭い名前も出てきます。

当時の大統領はスカルノ氏、といえば、当然若き日のデヴィ夫人も・・・

夫人の話はちょっと置いといて。

第二次大戦後、インドネシアは旧宗主国オランダと戦い、1949年独立を果たします。その戦争に旧日本軍兵士が多数参加したことは知られています。

日本とインドネシアとの因縁浅からぬ結びつきが何によるものかと思っておりましたら、この小説の上巻P254にこんな記述がありました。

インドネシア空軍出身の大統領副官の言葉です。

「ソラノシンペイというのかな、ゴッド・ソルジャー・フロム・ザ・スカイという日本語があるだろう。あの“空の神兵”という言葉は、インドネシア人が作り出したんだぞ」

「インドネシアには、十二世紀頃のクディリの王、ジョヨボヨの予言というのがあってね、白い人間が三百年インドネシアを支配する。そのあと、北方の空から小柄の黄いろい人間が白い馬に乗って舞いおりてきて、白い人の圧制から、インドネシアを解放する。この黄いろい人間がとうもろこしの実るまでのごく短い間、支配したあと、幸福な時代が訪れる。そんな話なんだが、皆それを信じていた。じっさい、白いオランダ人がインドネシアを支配して三百年たったら、黄いろい日本人が白い馬の代りに、白い傘にぶら下がって、メナドやパレンバンに降りてきたんだよ。インドネシア人もこれには驚いて、“空の神兵”といいだしたんだ」

ナウシカの予言みたいだ・・・とつい不謹慎な連想を。

「ジョヨボヨの予言」は作者の与太話ではなく、きちんと存在するもののようです。ネットでは公的な機関の記述はみつけられませんでしたが、

ネット記事「ジョヨボヨの予言」
http://www1.tcat.ne.jp/eden/Hst/column/ramalan_joyoboyo.html

を書いた早崎隆志さんという方が、参考文献として

染谷臣道「ジョヨボヨ伝説」 ~ 石井米雄監修『インドネシアの事典』同朋社出版 1991年

をあげています。(他にも多数参考文献の記述あり。)

長きにわたってインドネシアを支配したオランダは徹底した愚民政策をとり、搾取し続けました。そのオランダを追い払った日本は、文字通りインドネシアの救世主と受け取られたのでした。

で、「空の神兵という言葉はたしかにあったな。そういう名前の軍歌があって、子どもの頃よく歌ったもんだ」と「富永」(登場人物の一人)は軍国少年時代を思い出します。

で、その軍歌がこれ。ネットには、なんだってあるんですよ・・・

『空の神兵(字幕付)』
http://youtu.be/AFHDcCBkJtc

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作詞:梅本三郎 作曲:高木東六
歌:坂本博士 ヴォーチェ・アンジェリカ

すっこーんと抜けるような能天気な歌です。これ軍歌かぁ・・・

本題から外れますが、つい軍歌を検索して、これも発見。

↓これは厭戦歌だなぁ・・・平和を恋ふる歌だなぁ・・・

『軍歌 麦と兵隊』
http://youtu.be/2UBZ1Aa-JCw

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作詞:藤田まさと 作曲:大村能章

歌っているのは素人さんのようですが、いい声です。

写っている兵隊さんの何人が生きて祖国に帰れたか・・・

脱線しました。

小説『神鷲商人』は、建国の父といわれたスカルノ大統領の失脚とその死で終りますが、失脚のきっかけとなったのは「九月三十日事件」と言われる、1965年9月30日(正確には10月1日未明)の軍事クーデター(未遂)事件です。

背景に国軍と共産党の権力闘争があったとされますが、CIA他の干渉も取りざたされています。

小説の記述はデヴィ夫人の回想録『デヴィ・スカルノ自伝』 (文藝春秋 1978年)によるところが大きいと思われます。

が、とかく渦中の人ほど混乱に巻き込まれて全体がつかめないことが多く、デヴィ夫人は最初共産党の陰謀と信じ、共産党支持の第二夫人の下にとどまり大衆の声にこたえようとしないスカルノ大統領を歯がゆく思います。

事実この間に大衆の支持はスカルノ大統領から離れていくのですが、ふとしたことでデヴィ夫人は“被害者”側の軍部の謀議も耳にし、慄然となる・・・

若き日のデヴィ夫人、ただ者じゃありません。1978年版の『デヴィ・スカルノ自伝』は臨場感に溢れて興味深いですよ。2010年に新しい「回想録」を出していますが、ちょっとお上品にまとまりすぎている気がします(今、読みかけ)。

一連の出来事は、スカルノ失脚を狙ったスハルトの仕組んだことだったのでしょうか・・・

その後、スハルト独裁政権は30年以上続きましたねぇ・・・

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コメント

す、すごいcoldsweats02
マイマイさん、いろんな本を読まれてるんですね(この文、変?)
理系の人(私にはそう思えまする)と思いきや、文系にも明るいし、とにかく恐れ入りましたdog

投稿: ジャネット・ぽこ・リン | 2013年8月22日 (木) 21時20分

ジャネット・ぽこ・リン様
趣味は読書と散歩です(←無趣味といってるみたいなもの)。
こう暑くては散歩はできませぬので、本を読むことに(乱読です)。
 
そろそろ違うことすべきかな、とは思っていますが、なかなか・・・

投稿: マイマイ | 2013年8月23日 (金) 13時33分

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