« 「俺たちは神になるんだ」 | トップページ | 降雪のあとに »

2013年1月25日 (金)

『誤植読本』

誤植=印刷物の字を間違えること。昔は活字を1本1本配置(植字)していたので、活字を間違えて置くことを誤植といいました。

キーボード入力が主流の今はタイプミス変換ミスが主流ですが、誤植と言っております。

(植字ミスだけでなく、印刷物のテキスト関係のミスを総じて「誤植」といいます。)

daily-sumus 林蘊蓄斎の文画な日々」というブログがあります。

本好きの方には是非お勧めしたいブログです。
http://sumus.exblog.jp/

1月18日が『誤植読本』でした。ブログ主の林哲夫さんも著者の一人です。

130125goshoku

『誤植読本』 高橋輝次編著 東京書籍 2000年7月28日

これは面白そう、と飛びついて借りてきました。誤植には仕事柄、縁があります。(誤植製造者です。)

で、借りてきて読み始めて、すぐ気がつきました。この本以前に読んでる・・・

そりゃそうです、読んでないわけがありません。誤植で痛い目を見てますから、どうにかしようと必死なのです。しかし、どう気を使っても、誤植はなくなりませぬ。

内容を正確に覚えているでなし、この際もう一度じっくり読んでみましょう。

ところで、有名な誤植事件をご存知でしょうか。

この本の第1話(「校正畏るべし」 戸山滋比古)にもでてきます。それは

「姦淫聖書」

と言われております。Adulterous Bible, 1632。

〈モーゼの十戒中、第七の「汝姦淫するなかれ」(Thou shalt not commit adultery) の「なかれ」(not)が落ちて、「姦淫すべし」となってしまったというのだ。

 この聖書もちろん全部焼きすてを命ぜられたが、これまでに六冊も発見されている、という。〉 (10ページ)

聖書の誤植については、この本を少し読んだだけで、もうお二人の著者が取り上げています。

「誤植」河野多恵子(21ページ)には、学校で国語の先生から聞いた話として、

〈昔、ヨーロッパでキリスト教の権力が強大だった頃、聖書の校正には格別の慎重さが要求された。それでも、誤植は皆無ではなかった。で、どこかの国で、聖書に誤植が起きた場合には校正者を死刑に処することにした。(後略)〉

ワタクシなんぞ、いくつ命があっても足りませぬ・・・

「誤植さがしの昼下がり」 森まゆみ(31ページ)

〈歴史上有名な誤植では一六三一年に印刷された聖書で、モーゼの十戒の「汝、姦淫するなかれ」のnotが抜けたという話がある。この姦淫奨励聖書のそそっかしい印刷者は、罰金を払わせられたが、今では値のつかない貴重本として大英博物館に保存されているという。〉

(追記:発行年が1631年と1632年の2説書かれています。ネットの英文ページを見ましたが、1631年と1632年の両方が表示され、どちらが合っているのかは不明です。)

Wikipediaの「誤植」の項では、「姦淫聖書」の他に「馬鹿者聖書」と「酢の聖書」を取り上げています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%A4%E6%A4%8D

他にも、

「日本の法令の誤植」
「辞書の誤植」
「教科書の誤植」
「漫画の誤植」
「その他書籍の誤植」
「雑誌の誤植」
「新聞の誤植」
「その他メディアの誤植」
「定着した誤植」
「筆名・芸名・団体名の例」

と笑える話が満載です。

--------------------------

以前、誤植満載の本を作りかけました。

いえ、制作担当のワタクシが悪いんじゃなくて、原稿があまりにもいい加減でした。

あちこちの文献を引用しているのですが、どうにも意味が通らないところ、相反するところ、常識で考えられないところがありまして、覚悟して、200冊ほどの引用文献の原典にあたることにしました。

すると、出るわ出るわ怒涛の誤記・脱落・・・

ある程度の中堅出版社が発行してくださる本です。著者本人の零細出版から半分(というより大半)趣味でお気楽に出す本とは違うのです。

原稿のまま本にしていたら、後からどれだけ頭を下げても済みませんでした。

当の本人は何も気にしていません。万事、大体合っていればよし、とするようなお方でして、本筋を間違えていなければ枝葉末節がなんだ、がモットーのようです。

よって著者校正はまったくあてにならないと踏んで、ワタクシともう一人の本職の校正者とでじっくり読みました。

あれが某零細出版の最後のまともな仕事だった気がします・・・

|

« 「俺たちは神になるんだ」 | トップページ | 降雪のあとに »

文系(本とか)」カテゴリの記事

コメント

面白そうな本ですねhappy01

誤植も問題だけど、誤読もありますね。

有名なのが、方広寺鐘銘事件ですね。

「国家安康」を、
「家康を呪詛(呪う)するもの」と、
難癖をつけ、後に、大坂の陣に至った

水滸伝にも、似たような話がありました
(天子の勅命をわざと読み間違えた)

言葉と言うのは、難しいですねcoldsweats02

投稿: R.Ptarmigan | 2013年1月25日 (金) 20時07分

和文タイプと言いましたっけ?
面白そうだなと眺めていたら、
一度だけ触らせてもらえました。
生業にしていたら誤植の女神になっていたことでしょう。
その前に、言葉の勉強が先だろう!の話ですがweep

投稿: kiri | 2013年1月26日 (土) 09時45分

R.Ptarmiganさま。
面白い本ですよ。
くっくっと笑いをこらえるのに苦労しますので、人前では読まない方がいいですよ。
御案内の「方広寺鐘銘事件」も有名な難癖事件ですね。
言いがかりをつけるネタを待ち構えていられたのでは堪りません。
言葉はいくら気をつかったつもりでも、取り違えられたり、本当に難物だと、つくづく思います。

投稿: マイマイ | 2013年1月26日 (土) 10時05分

kiriさま。
いっそ女神になってしまえば、自分が正義!、と主張できますわね。
言葉はいくつになっても本当に難物です。
某朝日新聞の筒井康隆氏の朝刊連載小説に知らない表現が溢れかえっていて、自分がいかに言葉を知らないか、毎朝チクチクと思いしらされています。

投稿: マイマイ | 2013年1月26日 (土) 10時13分

こんにちは。

最近は、「活字を拾う」などは、死語になった
感がありますが、いかにコンピュータ編集の
時代になっても、機械が文脈を訂正してくれる
訳も無く、読んでて「あれっ?」と思うことは
多々ありますね。

このようなギョウカイの裏話(笑)的な話題は
大好きです。いちど探してみます。

今は、本もネットですぐに手配できるように
なって便利は、便利ですが、電車待ちに
本屋さんで暇をつぶす楽しみが減ってしまい
ましたbook

投稿: なかっちょ | 2013年1月27日 (日) 20時10分

なかっちょ様。
本好きの方には面白い本ですよ。
「daily-sumus 林蘊蓄斎の文画な日々」さんのブログには、6月にちくま文庫から刊行される旨の記述がありました。
 
本を探す楽しみはおっしゃるように様変わりしましたね。
古本好きとしては、新古書店やネット販売の台頭で、いわゆる古本屋が消えていくのが残念です。

投稿: マイマイ | 2013年1月28日 (月) 10時19分

すみません、「戸山滋比古」はしゃれですか?

投稿: | 2016年8月12日 (金) 01時39分

すみません、世代間言語相違のようで、ご質問の意味がよくわかりません。
「校正畏るべし」は「後生畏るべし」のもじりではありますが・・・
「戸山滋比古」氏は、英米文学者・言語学者、文学博士として著名な方です。


・・・こんなんでよろしいでしょうか。

投稿: マイマイ | 2016年8月12日 (金) 10時43分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/525834/56612590

この記事へのトラックバック一覧です: 『誤植読本』:

« 「俺たちは神になるんだ」 | トップページ | 降雪のあとに »