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2012年10月12日 (金)

キネ旬774のシュールな映画

本棚から「キネマ旬報 創刊60周年記念特別号 1979年11月下旬号 No. 774」が出てきました。

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古いものを後生大事にとっておく貧乏性・・・ではなくて、古書店の100円均一で見つけたものです。

目玉記事が「キネマ旬報ベスト・テンと映画史」で、1924~1978年の「日本」と「外国」映画のベスト10を掲載しています。昔懐かしい人には面白い企画です。

196頁の「外国映画批評」に面白い記事がありました。

出演ヘルムート・ベルガー、イングリット・チューリンときいて、ルキノ・ヴィスコンティ「地獄に堕ちた勇者ども」と反応するのは往年の洋画ファン。

実在のクルップ鉄鋼財閥とナチスの関係、一族の醜聞を題材にしたといわれています。退廃美の極みみたいな、「お耽美」好きにはたまらない映画でした。

が、映画批評でとりあげているのは、ヘルムート・ベルガー、イングリット・チューリン出演なれど「地獄に落ちた勇者ども」ではありません。

黒田邦雄さんが書いているのは、監督ティント・ブラスによる原題「Salon Kitty」について。

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公開時の邦題は恐ろしくて書けません。あんまりなタイトルなので、ビデオ版では「鉄十字の愛人」、DVD版では「サロン・キティ」に変更されています。

と言いつつ書いてしまおう。「ナチ女秘密警察○○○親衛隊」。あんまりだ・・・

黒田さんの評を一部引用させていただきます。

〈三島由紀夫は「地獄に―」を評して“正にミイラ取りがミイラになる程、ナチスの時代の「嫌悪に充ちた美」を再現しているのである。”と書いているが、ヴィスコンティがオペラ好きのミイラなら、ティント・ブラスはパンクロックのミイラというべきか。全編こんなに浮かれていいのかな、と柄にもなく殊勝なことを考えてしまう程、頭から尻尾までナチスの〈美〉がぎゅうぎゅう詰まっているのだが、その割に胸焼けしないのはキャンプなフィーリングのせいだろう。〉

全編引用したいくらい面白い評なのですが、著作権ナントカにひっかかります。

(キャンプなフィーリング、というのがわかんないんですけど。)

とんでもないタイトルがついたのは、一般の映画館じゃなくて当時盛んだったポルノチェーンで公開されたからです。(しつこいけど、あんまりだ・・・)

原題「Salon Kitty」でYouTube検索するといくつか出てきます。最初のほうだけ見ましたが、おお、お耽美の少々悪趣味の物好きにはたまらない色彩の氾濫する映画です。

リリアーナ・カヴァーニの「愛の嵐」にも通ずるものあり。

お耽美退廃美好きなら見とかなきゃ。レンタルショップで借りるか・・・

で、終わってしまってはいけません。黒田さんはそもそもこんなことを書いています。本題はこっち。

〈ポルノチェーンで公開される映画は、まず闇から闇へ葬り去られるのが運命で、使いすての娼婦の如き存在である。まだしも邦画なら眼を光らせている輩が結構いて、妻の座にたどりつくことなきにしもあらずだが、洋画とあればまず絶望。数年前にもジャック・スカンドラリという25歳の青年監督がサドの「閨房哲学」を映画化した「淫蕩の沼」というフランス映画があったが、これがレオノール・フィニーハンス・ベルメール的なシュルな感覚でサドの世界にもぐり込もうとした痙攣的な美に満ちた映画で、たっぷり楽しませてもらったのだが、あのフィルムなどどうなっただろうか。今一度見たいものだが。〉

もう一度見られますよ、黒田さん。

(それにしても、70年代頃の男の人って、物事を娼婦に喩えるのが好きみたいですね・・・)

原題「LA PHILOSOPHIE DANS LE BOUDOIR」でYouTube検索すると英題「Beyond Love and Evil」が出てきます。

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見ましたよ、いやあ、フェデリコ・フェリーニとピエル・パオロ・パゾリーニを足して2じゃなく3で割って横すべりしたような、まさに1970年頃のシュールな映画でした。

たった40年前の映画なのに、異世界の観あり。

この映画の評をネットで探していたら、「最低。それ以外に言葉はない。」というのが出てきました。

世界観が違えば理解しがたい最低映画ではありますけどね・・・

ワタクシはハンス・ベルメールやレオノール・フィニー、好きなものですから・・・

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コメント

どうしても「愛の嵐」と言えば、ヘルムートベルガー、と結びついてしまいます。
何処でこんがらがっちゃったんでしょう?
(あれ、この日本語大丈夫ですか?)
清き乙女は、愛の嵐でKO食らいました。

投稿: kiri | 2012年10月12日 (金) 21時56分

kiriさま。
「愛の嵐」はヘルムート・ベルガー偏愛のヴィスコンティが絶賛したそうですから、ゴッチャになるのも無理は無い・・・のかどうか。
ヘルムート・ベルガーは「家族の肖像」が素敵でした。何度見たことか。
「愛の嵐」はダーク・ボガートとシャーロット・ランプリング。これも絶妙のキャストだった気がします。
(DVDを買いたくなってきた・・・)
あの映画でKO食らったなら、残りの人生、何があってもだいじょーぶ・・・かな。

投稿: マイマイ | 2012年10月13日 (土) 13時19分

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