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2012年8月 3日 (金)

「ドイツ婦人の家庭学」

数年前に見つけた本です。

「ドイツ婦人の家庭学」 八木あき子 新潮社 

昭和58年(1983年)4月10日

120725yagi

この本がどうかしましたか? そんな古い本を持ち出さなくても、「生活の知恵」本はたくさんあるのに・・・

いえいえ、この本が気になるのはですね、単に生活の知恵を集めただけでなく、著者の基本姿勢が興味深いからです。

「序にかえて」から少々長めの引用をさせて戴きます。

〈(略)
 人類はじまって以来、男と女はいろいろな意味で対立するものでした。恐らくこれからも、永遠にそうであるに違いありません。

 が、両者の生物学的な違いは、社会生活の中でおのおのの役割を決めて来ましたし、大雑把に言って女性がもっぱら家庭を守るのに対して、男性は外に向かって仕事をしてきました。そして、このそれぞれの役割の多くは、比較の上に立って優劣を論じられるものではありませんのに、得てして殿方たちは自分たちの方が女性よりも社会的に優れているとされ、そういった錯誤を双方が抱くにいたって、それはそのままその時々の時代と社会に反映して来たようです。

 歴史的に見ましても、男性優位に不満を抱く女性たちが殆ど周期的に男性に対するレジスタンスを試みて来たことが窺えます。でも、そういう角度から見た歴史は一般にあまり伝えられておりません。そして、ウーマン・リブといった動きは、二十世紀の一時期、二度の大戦を挟んで中断されたかに思われましたが、今日また活発になったというわけです。
(略)
 実は、人類史の中で、女性優位の社会は幾度もあったのです。たとえば最近、と言っても十八世紀のことですが、
(略)
 そのように女性が権力を揮っていた時代でも、大多数の女たちは家庭を自分の城として采配し、自分たちのその場所を守り続けていたのでしょう。
(略)
わたくしたち女性が愛想をつかそうとつかすまいと、どうやら女たちだけで理想社会を創るわけにはいかないようです。 
(略) 
女が天下を采配すれば戦争の無い平和な世の中になるとの考えが、甘い夢に過ぎないということが分かる筈です。
(略)〉

ならば自分たちの“城”を自分の手で心地良くかつ合理的に切り盛りすることからはじめましょう。男性の造った世界を内側から征服していきましょう。それが外部(社会)をも女性たちのセンスで充実させていくことに繋がる・・・と。

本文中の「生活の知恵」を紹介する言葉の端々にも著者の意気込みがにじみ出て、実に元気な文章になっています。

知恵そのものは現在の日本では通用しない部分もありますが、著者の独特の言葉使いのおかげで面白い読み物になっています。

著者はどんな人?

新潮社のサイトによりますと
http://202.218.112.138/writer/3061/

〈1927年宮城県生まれ。多摩美専に学び画家を志すが、のちにNHK脚本研究会会員となり、放送作家として多くの作品を発表する。1960年に日本を離れ、ヨーロッパの放送・マスコミ界で活躍する一方、日本の新聞・雑誌に寄稿。著書に『ドイツ婦人の家庭学』『二十世紀の迷信 理想国家スイス』『五千万人のヒトラーがいた!』など。1991年没。〉

会ってお話ができたら、どんなに楽しい人だったでしょうか。

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で、「言わずもがな」をひとつ。

この本は、あるベストセラーのタネ本ではないかと言われています。

今年2012年オウム真理教の逃亡犯が逮捕されました。その一人の菊地直子容疑者に間違えられて2005年誤認逮捕され、人生が狂っちゃったのは元祖カリスマ主婦の山崎えり子さん。

元夫の暴力から逃れるため偽名を使っていたら書いた本が売れちゃって、税金どうしよう・・・で、他人名義で云々・・・(詳しいことは知りません。知りたい方には解説サイトが色々あります。)

誤認逮捕であることが判明したものの、副産物で山崎えり子さんの経歴が嘘であることも判明しちゃいまして、一気に「山崎えり子」大暴落。

山崎えり子さんの「節約生活のススメ」(1998年)には「ドイツ婦人の家庭学」に書かれていることが細切れで出てきます。

汚れたガラスは玉葱を半分に切りその切り口でこすり取るとか、赤ワインのしみは白ワインで揉み洗いするとか・・・

評判になった割には印象の薄い本でしたが、ドイツに行ったことがないのに「ドイツ生活で覚えた知恵」を書いたからでしょうね。

ごまかしは細部で透けて見えてしまいます。

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