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2011年4月30日 (土)

「天一坊」とはなんぞや 3

4月26日の「「天一坊」とはなんぞや」、のその3。

●『天一坊事件』 菊池寛 
 菊池寛全集 第三巻  
 文芸春秋 平成6年1月15日発行
 (初出「日の出」昭和8年1月号)

浜尾四郎(昭和4年)、直木三十五(昭和9年以前)の天一坊と発表時期に大きな隔たりはありませんが、「天一坊の真偽より幕府の利益優先」の前2作とは違い、一言でいうなら「純愛小説」の趣きあり。

天下の名君吉宗公は不遇の若き日、忠誠と愛慕に溢れた少女「沢の井」と結ばれ、沢の井は懐妊する。その頃吉宗の周囲が動き始めており、沢の井は涙ながらに身を引く。将軍職についたあとも吉宗公は沢の井を忘れたことはなかった。

そこへ出現した「天一坊」。できるだけのことはしてやろう・・・

確かに証拠の品は持っていたが、不審がある、と大岡越前守が部下を遣わして調べると、沢の井とその子は出産と同時に死んでおり、天一坊は、沢の井の母からお墨附と短刀を奪っていたことが判明。一味は捕縛された。

しかし吉宗の心は晴れない。

「心の虹が、めちゃめちゃに塗りつぶされたことが、限りなく悲しかった」

と菊池寛は書いています。

***********

以上とりあえず短編の「天一坊」数点。

まだ柴田錬三郎『徳川太平記』が残っていますが、590ページの長編です。気力を蓄えてから読まないと挫折しそう・・・

早乙女太一主演「新説・天一坊騒動」観劇から始まった「天一坊」めぐりですが、さて何が新説であったか。

『芝居の裏おもて』三田村鳶魚
『殺された天一坊』浜尾四郎
『大岡越前の独立 大岡忠相・天一坊』 直木三十五
『天一坊』下母澤寛
『天一坊事件』 菊池寛

になくて「新説・天一坊騒動」にあるもの。それは、

母が死んだのではなくて女郎屋に自ら身売りし、なおかつそこで天一坊の妹を生んでいること。

天一坊と吉宗公が対面していること。

この2点が、どの資料から出てきたのか気になります。脚本家のイマジネーションのなせる描写でしょうか。

三田村鳶魚を除く上記4点いずれも見てきたような話に仕上げておりますし、要するに、より感動させた方が勝ち、の表現者の世界ですから、観る方もつべこべ言わずに楽しむべし・・・

**********

なお、三田村鳶魚『芝居の裏おもて』で俗説とされている『天一坊実記』は

国会図書館「近代デジタルライブラリー」
http://kindai.ndl.go.jp/

で公開されています。

「天一坊実記」
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/881661/1

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コメント

短期間にいっぱい読みましたね。さすがです!

投稿: ハナミズキ | 2011年4月30日 (土) 23時07分

いずれも15分程で読める短編ばかりです。
読み比べてみると面白いですよ。
時代小説はこれまで縁がなかったのですが、これを機会に読んでみようかと思っています。

投稿: カピバラ | 2011年5月 2日 (月) 09時45分

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